西宮の家庭教師ダイアログによる過去問解説。今回は須磨学園中学校の過去問です。
もくじ
1 種子の運ばれ方
「植物の種子の運ばれ方」に関する問題です。全体的に知識よりも日常的な経験に対して関心や問題意識を持っているかを問う、須磨学園中学らしい問題だと思います。
問1 難易度:★☆☆☆☆
柿の収穫量は、2020年時点で42年連続で和歌山県が1位です。関西にあるスーパーや青果店で売られている柿は大半が和歌山県なので、ふだんから関心をもって生活していれば自然と得られている知識でしょう。
和歌山県は本州最南端に位置するため、温暖な気候で果物の栽培が非常に盛んで「果樹王国」とよばれることもあります。ちなみに2位は奈良県、3位は福岡県でこれを答えても正解になりますが、この問題は「和歌山県」と答えてくれることを期待していると思われます。
問2 難易度:★★★☆☆
これは知識問題というよりは、ふだんから興味をもって植物と接しているかが問われています。自分の記憶をたどって、秋や冬に落葉しているのを見たことあるもの、もしくは冬や春に葉っぱのない状態を見たことがあるものを除外していきましょう。
②イチョウ、③イロハモミジなどは落ち葉が秋から冬にかけて落ちているのをよく見ますね。また、④サクラは花の咲き始めから満開のころには葉がありません。散り始めのころから若葉が芽吹いて「葉桜」などと呼ばれるのを聞いたことがあるでしょう。
よって、消去法で①が正解です。①は実、花、葉の特徴から常緑樹のクスノキだと思われます。
クスノキは常緑広葉樹で巨木になるものが多く、また兵庫県の木でもあります。
問3 難易度:★☆☆☆☆
選択肢の中で、「無胚乳種子」であるものを選べば良いことになります。このうち無胚乳種子はヒマワリです。こういった植物の種子は、胚乳ではなく子葉に栄養分をたくわえるという特徴があります。
問4 難易度:★★☆☆☆
種子がどのように地上にまかれるか、という方法は植物によってちがいます。これは、自分たちのすむエリアを広げるための戦略なのです。
①種子がはじけてとぶ植物のなかまには、ホウセンカ、カタバミなどがあります。
②水流に乗って種子が運ばれる植物はココヤシやヒルガオの仲間などが知られています。
③種子が風で飛ばされる植物のなかまには、タンポポやマツ、ススキなどがあります。
④動物に食べられ、未消化のまま排泄されることにより運ばれる植物は多様で、おいしい果実をもつものはほとんどがこれにあたります。もちろん柿もそうですね。
問5 難易度:★★☆☆☆
切り取られた葉が光合成をすることはなく、またそれによってできた栄養素が種子に運ばれることもないので、④が間違いです。他はありそうですね。
問6 難易度:★★☆☆☆
適切でない選択肢がいくつあるか分からないので、すべての選択肢を丁寧に吟味する必要があります。実験結果を適切に選んで比較することが重要です。
① 柿に含まれるタンニンの量としぶ味の関係を調べたいので、タンニンの量が異なり、水へのとけやすさが同じものを比較します。「熟した柿A」と「熟した柿C」を比較すると、タンニンの水への溶けやすさは同じで、タンニンの量が0.4の「熟した柿C」よりも、1の「熟した柿A」の方がより強くしぶ味を感じることが分かります。よって「柿に含まれるタンニンの量が少なくなると、しぶ味は感じにくくなる」は正しいと分かります。
② 「未熟な柿A」と「熟した柿A」を比較すると、含まれるタンニンの量は同じですが「未熟な柿A」の方がより強くしぶ味を感じることが分かります。よって「柿に含まれるタンニンの量が変化しないと、しぶ味の感じ方が変化しない」は適切でないと分かります。
③ 「熟した柿A」と「熟した柿B」を比較すると、まずタンニンの量は同じです。また、水へのとけやすさは「熟した柿A」が0.4、「熟した柿B」が0.1で、「熟した柿B」の方が水に溶けにくいことが分かります。よって「熟した柿Bのタンニンは熟した柿Aのタンニンよりも水にとけやすいため、しぶ味を感じにくい」は適切でないと分かります。
④ 「熟した柿A」と「熟した柿B」を比較すると、タンニンの量は同じなので「 熟した柿Bは熟した柿Aよりも含まれるタンニンの量が少ないため、しぶ味を感じにくい」は適切でないと分かります。
⑤ 「熟した柿A」と「熟した柿C」を比較すると、タンニンの水へのとけやすさは同じです。よって「熟した柿Cのタンニンは熟した柿Aのタンニンよりも水にとけやすいため、しぶ味を感じにくい」は適切でないと分かります。
⑥ ①より「熟した柿Cは熟した柿Aよりも含まれるタンニンの量が少ないため、しぶ味を感じにくい」は正しいと分かります。
問7 難易度:★★☆☆☆
どんな果物でも、甘くておいしい方が食べたくなりますし、しぶいと食べたくないですよね。それはヒトも動物も変わりません。動物に食べてもらわなければ種子が運ばれることもありませんので、植物はがんばって果実を甘くするのです。
【解答】
より動物に食べられやすくなって種子を運んでもらうのに有利になる
2 金属と水よう液
「金属と水よう液」に関する問題です。全体的に易しい設問ばかりなので、合格には全問正解が必須でしょう。
問1 難易度:★☆☆☆☆
A~Dの4種類の金属は、鉄、金、銅、アルミニウムです。 このうち塩酸を加えて気体が発生するのは鉄とアルミニウムで、どちらも水素が発生します。
問2 難易度:★☆☆☆☆
実験で発生した気体を時間をおいて集めるのは、なるべく不純物を少なく集めるためです。つまり、最初の方の気体はもともと試験管の中にあった気体が混ざってしまっているからです。
問3 難易度:★☆☆☆☆
水素は空気より軽いので、上方置換で集めます。上方置換では、ガラス管の先を試験管の奥まで入れた状態で集めます。空気となるべく混ぜずに情報から軽い気体で置き換えていくためです。
問4 難易度:★★☆☆☆
理科でいう「とける」には次の(ア)~(ウ)の3種類あります。
(ア)固体の温度が上がって液体になる
(イ)ある物質が液体とまざって透明で一様な溶液になる
(ウ)化学反応を起こして別のものになり、みえなくなる
【実験】の操作2~4で試験管に入れた金属が「とけた」反応は、(ウ)です。
①→(ア)、②→(イ)、③→(ア)、 ④→(ウ)なので、正解は➃です。
問5 難易度:★★☆☆☆
操作2の結果より、AとBはどちらかが鉄でどちらかがアルミニウムです。また、CとDはどちらかが金でどちらかが銅です。
操作3の結果より、Cが銅でDが金だと分かります。
操作4の結果より、AがアルミニウムでBが鉄だと分かります。
問6 難易度:★★☆☆☆
こういう問題は、混合比で計算するよりも、以下のように実際に体積を決めて計算した方がスッと理解できることが多いです。
王水を40㎤作る場合を考えます。体積比はこい硝酸とこい塩酸の体積比が1:3なので、こい硝酸(密度1.4g/㎤ )10㎤とこい塩酸 (密度1.2g/㎤ )30㎤を混ぜることになります。このとき、それぞれ質量は、
こい硝酸 1.4×10=14
こい塩酸 1.2×30=36
よって、質量比は、(こい硝酸):(こい塩酸)=14:36=7:18
3 熱の移動
熱の移動に関する問題です。「気体を膨張させると温度は低下し、圧縮すると温度は上昇する」ことは中学受験の理科知識としては必須ではないと思います。こういう場合、問題文で示されるパターンが多いのですが、今回は読み取れないので完答は少し難しいです。
問1 難易度:★★☆☆☆
電池の数を同じにして太い電熱線と細い電熱線を比べたとき、水の温度上昇が大きいのは太い電熱線です。
問2 難易度:★★☆☆☆
まず本文に書かれた情報を整理しましょう。
・電熱線を用いて100gの水を温める
・電熱線に1Aの電流を流 すと1秒間に1.2calのエネルギーが発生
・水1gを1℃上げるには1calの熱量が必要
10分間は600秒なので 電熱線に1Aの電流を10分間流し続けると、1.2×600=720calのエネルギーが発生します。
よって、100gの水を温めたときの温度上昇は、
720÷100×1=7.2(℃)
問3 難易度:★☆☆☆☆
火力発電などの方法で電気エネルギーを作るときには二酸化炭素が発生し、この二酸化炭素が地球温暖化につながる可能性があるといわれています。
問4 難易度:★★★☆☆
部屋の空気をあたためる場合、室外機の中の循環気体が室外から熱を吸収できるようにするためには、外気の温度より循環気体の温度を低くする必要があります。
気体を膨張させると、温度は低下します。これは、山の上の空気は気圧が低く(つまり平地の空気よりも膨張していて)、気温が低いことと同じ理由ですね。
問5 難易度:★★★☆☆
逆に、循環気体を圧縮すると温度が上がりますので、循環気体の温度を室内の空気の温度より高くすることができます。これは自転車の空気入れを使っていると筒の部分が熱くなってくる現象と同じ理由です。
問6 難易度:★★☆☆☆
(ク)から求めていくのが簡単ですね。情報をまとめておきましょう。
・室内の空気を1℃上昇させるのに必要な熱量は55kcal(=55000cal)
・1秒間に60calの電気エネルギーを作り出す暖房を用いる
よって、空気を5℃上昇させるのに必要な時間(分)は、
55000×5÷60÷60=76.38…≒76(分)
(キ)装置Bに関する情報をまとめます。
・装置Bで使われた電気エネルギーのすべてが循環気体に熱として吸収される
・電気エネルギーによる熱量を1とすると、循環気体は室外機から6の熱量をもらう
・装置Bは1秒間に60calの電気エネルギーを使う
使う電気エネルギーは1秒間に60calで(ク)の暖房器具と同じで、さらにその6倍の熱エネルギーを室外機からもらうことになります。つまりあわせて7倍、1秒間に420calのエネルギーが得られることになります。
よって、空気を5℃上昇させるのに必要な時間(分)は、
55000×5÷420÷60=10.91…≒11(分)
4 地層
地層に関する問題です。ひねりもなく、とくに読解力も要求されない、須磨中の理科としてはかんたんな問題だと思います。
問1 難易度:★★☆☆☆
石灰岩は主にサンゴや貝殻、微生物などの生物の死がいからできています。
火山灰からできるのは凝灰岩、泥からできるのは泥岩、れきからできるのはれき岩ですね。
問2 難易度:★★☆☆☆
石灰水に息を吹きこむと石灰水と息に含まれる二酸化炭素が反応して炭酸カルシウムができ、炭酸カルシウムが水にとけきれずに石灰水が白くにごります。さらに息を吹き込むと炭酸カルシウムがとけ、石灰水の色は無色透明になります。
このとき、炭酸カルシウムは炭酸水素カルシウムという、別の水にとけやすい物質に変化しています。
問3 難易度:★★★☆☆
図を見ると、下から砂岩、れき岩と堆積しています。砂岩は海の河口のやや遠いところ、れき岩は河口の近くで堆積しますので、砂岩が堆積した後のタイミングで土地が隆起し、河口の近くになったと考えられます。
このときの土地の隆起と、洞窟ができたときの隆起とで合計最低2回は隆起が起きていることが分かります。
問4 難易度:★★☆☆☆
しん食によってできる地形としては、三日月湖、V字谷、河岸段丘があります。
一方、扇状地は土砂が堆積することによってできる地形ですね。
問5 難易度:★★☆☆☆
炭酸飲料のふたを開けると、液体の部分からどんどん気泡が出てきますね。ふたをされてた炭酸飲料は、高い圧力をかけられた状態で通常溶かせる量より多くの二酸化炭素が溶けています。それがふたを開けて圧力が下がることで溶けきれなくなって出てきているのです。
【解答】
炭酸飲料のふたを開けると飲料の中から二酸化炭素の気泡が出てくる。
問6 難易度:★★☆☆☆
「1年間に天井から地下水が1㎠あたり60㎤しみ出してきている」とあります。降水量を調べる要領で縦長の容器に地下水をためると、1年間で60cmの地下水の柱ができますね。
体積比でそのうち炭酸カルシウムが6%で鍾乳石になるのが1%とすると、1年に伸びる鍾乳石の長さは、
60×\frac{6}{100}×\frac{1}{100}= \frac{36}{1000}(cm)
よって、1m(100cm)伸びるのにかかる年数は、
100÷\frac{36}{1000}=2777.77…≒3000(年)