
西宮市で家庭教師として中学生を担当し高校受験対策をしていると、かならず「内申点」の話題になります。みなさん、少なからず内申点については苦労されているのを肌で感じます。
とくに、西宮市は兵庫県内でも教育熱心なエリアで、学力レベルが高いと認知されています。
このことから「内申点の面では西宮市の中学校は不利なのでは?」という意見もよく耳にします。
ここでは、兵庫県公立高校入試と内申点のポイントを確認しながら、「内申点を上げるにはどうすればよいのか?」そして「西宮市は内申点の面で本当に不利なのか?」について考えていきます。
もくじ
兵庫県はかなり内申点重視
公立高校一般入試の合否は、「内申点」と「当日点」の合計得点で決まります。
生徒の学習状況や学校生活について、中学校の先生が内申書を作成し、受験先の高校へ送られます。そこに書かれている「学業に関する成績」が、いわゆる内申点です。各教科に対する5段階の評定をもとに、都道府県ごとに定められた計算方法で算出されます。
兵庫県における内申点の計算方法は、以下の通りです。
・主要5教科(英語、数学、国語、理科、社会):評定(~5)×4
・実技4科目(音楽、美術、体育、技術) :評定(~5)×7.5
以上、計算すると内申点の合計は250点です。
当日点も合計250点(50点×5科目)なので、比率は半分ずつです。全国的にみても、かなり内申点の割合が高い方だといえます。
それぞれの点数を表にまとめました。

これはつまり、当日のテストを受ける前の時点で半分決まっているということ。しかも、内申点の高い子はやるべきことをしっかりやっている子です。
よって「当日に逆転合格!」という事態は起こりにくくなっており、普段からの学習が重視されているといえます。
後述のように、内申点には中3の1・2学期の評定を使います。1・2学期の平均を使うとすると、以下のように考えることができます。
ひと学期の評定+1 主要5教科 → 当日点+4点に相当
実技4教科 → 当日点+7.5点に相当

その学期の評定が1上がると、主要5科目では4点、副教科では7.5点上がるのと同じ価値だということです。
500点満点中では当日点も半分に圧縮されるので、 主要5科目では2点、副教科では3.75点に相当します。
評価対象は中学3年生の1・2学期。だけど…
内申書には中学3年生の1・2学期の各教科の評定が使われます。実際に入試要綱にもそのように書かれています。家庭教師をしていると「じゃあ中2までは気を抜いていいね」と言われる生徒さんや保護者さんがいらっしゃいますが、そんなことはありません。
要綱には「社会、理科など学年によって分野別に学習する教科にあっては、第1、第2学年の学習の記録も十分参考にする」とも明記してあります。社会・理科では、1・2年生も気を抜いてはいけません。
また、英語・数学・国語については、1年生からの努力の積み上げがモノをいう科目ですので、中学3年のテストだけ良い点を取るなんてことは、かなり難しいことです。
どの科目も、気を抜いていい瞬間などないのです。

ただし、中学1、2年生の評定が悪かったからといって、あきらめることはありません。
1年生からコツコツやるのが結局近道ということ。でも、努力次第で挽回は可能です。
必要な内申点のめやすは?
西宮市内の公立高校一般入試の内申点ボーダー(めやす)は以下の通りです。
学校名 | 内申点 (めやす・250点満点) | 偏差値 (兵庫V模試) |
市立西宮 | 215 | 67 |
西宮東 | 205 | 63 |
県立西宮 | 195 | 60 |
鳴尾 | 190 | 57 |
西宮北 | 175 | 52 |
西宮今津 | 165 | 48 |
西宮南 | 165 | 47 |
西宮甲山 | 150 | 41 |
内申点はどうすれば上げられる?
では、どうすれば内申点を上げることができるのでしょうか。1つ1つ確認してみましょう。
当然、評定のベースはテストの点数です。言うまでもなく、最も重点を置いて対策すべきです。大事なのは副教科も含めて不得意科目を作らないこと。しっかりと計画を立てて、得意な科目ばかり勉強することのないように時間配分をしましょう。

家庭教師ダイアログでは、中学生の定期テスト対策にも力を入れています。勉強計画立案から、暗記必勝法、ケアレスミス対策など。
提出物は非常に大切です。「たかが提出物。実力とは関係ないじゃん」と考えている人もいると思います。なぜ提出物が大事なのか、お話しします。
学習指導要領において重視されるのは、「①知識及び技能」「②思考力、判断力、表現力」「③学びに向かう態度、人間性」です。このうち、①、②はテストや授業中の言動でかなり客観的に評価できます。
しかし、「③学びに向かう態度、人間性」は客観的に数値化することが難しい。例えば先生が、あの子授業に集中していないな~と感じていたとしても、それだけで態度が悪いと断じることは難しいでしょう。こういったことは総合的に判断されます。
そんな中でも、「提出物を出したかどうか」だけは簡単に客観的な評価ができます。だれの目から見ても明らかなので、クレームもつけようがありません。だからこそ、重視されます。1日遅れただけで大幅減点というケースも多いです。
もちろん、提出物の質も大事で、①②③すべてに影響します。余裕をもって丁寧に仕上げ、期日までに必ず提出しましょう。
「授業態度って具体的にどんなこと?」と感じる方も多いでしょう。
「積極的に発言すること」「態度よく授業を聞くこと」「先生に質問すること」「実技は下手でもいいので積極的にやること」などがよく挙がりますね。
下の写真は家庭教師先で見せてもらったプリントで、超重要なことが書いてあったので写真を撮らせてもらいました。中学校での最初の音楽の授業で配られたものだそうです。

以下抜粋です。
“音を外したら笑われる” ”一人だけ大きな歌で歌ったら「何を張り切っているんや」と言われる”。そんな雰囲気があると音楽の授業は成り立ちません。
「シラケること」が、音楽の授業では一番困ります。もっと困るのが、一生懸命やっている人や真面目にやっている人がバカを見る雰囲気があること。
これは、音楽に限らず、すべての教科でいえます。積極的な子や真面目な子をからかう風潮、たまにありますよね。周りの積極性を奪い、伸びようとする人の足を引っ張る行為です。良い授業をつくりたい先生からすると、正直邪魔で、とても腹が立つことです。
中学生は、思春期まっただ中の多感な時期。スカしてしまう気持ちもわからなくはないですが…その雰囲気に加担している生徒の印象は非常に悪く、低評価につながる可能性が高いです。
逆に「自分自身も頑張り、ほかの頑張っている子も応援する」という態度が最も高評価となるでしょう。
どんな態度が評価されやすいのか、逆にどんな態度がよくないのか、表にまとめてみました。
良い | 悪い | |
発言 | ・考えの道筋が分かるような発言 | ・知識のひけらかし (塾で習ったことをただ言う) |
態度 | ・頑張っている人を応援する ・みんなが黙っていたり、ゆずりあっているときに先陣を切る ・しっかり前を見て話を聞き、うなずきつつ時折ノートをとる ・授業後、生徒間で授業内容に関する感想を言い合ったり教え合いをする | ・やる気のある人を馬鹿にする ・ずっと下を見ている ・ずっと前を見ている ・「わかってるよ」という態度 ・理解できていない人を下に見るような態度 |
質問 | ・分からない所を具体的に説明して質問 ・自分の言葉で理解したことを説明 | ・ばく然とした質問 ・問題を丸投げするような質問 |
注意すべきは、塾ですでに習っている内容を学校の授業で聞く場合の態度です。知識をひけらかすように発言したり、「初めて知った!」という人を見下すような高慢な態度はNGです。
また、授業後に質問をするときも、「どこまで分かっていて、どこからが分からないのか」を具体的に説明して質問することが大事です。また、答えてもらった後は「ということは○○ということですね」と自分の言葉で説明しなおし、「ありがとうございました」とお礼を言いましょう。それがないと、ただ質問の数をかせいでいるようにしか見えず、良い評価につはながりません。
「学びに向かう態度、人間性」というポイントは学習指導要領にしっかりと明記されています。先生もそこを評価せざるを得ず、目を光らせています。軽視しないようにしましょう。

家庭教師先でも、保護者様から
「うちの子、点数はいいのに学校の先生に嫌われているから…」
「あそこの子は先生の印象がいいから内申もいい」
というグチをよく聞きます。返す刀で、
「学校の先生も人間だから好き嫌いがあるんですよね~」
がお決まりのセリフ(笑)。お気持ちはよく分かります。しかし、先生の好みや印象だけではないかもしれません。それは、「学校という集団生活の場で、周りと一緒に成長していきそうか」という点が重視されるからです。
保護者様の嫉妬めいたまなざしや態度・言動は、お子さまに伝染してることが多いです。高め合おうとする意思は薄く、他人の足を引っ張る可能性すらある。学校の先生はそんな子を評価するでしょうか。自立心の高い子の集まる上位の高校に送りたいと思うでしょうか。
お子さまの中にはそんな保護者様の言動を冷めた目で見ていて、「あんな醜い争いに巻き込まれたくない」と、勉強に対するモチベーションを下げていることもあります。
改善するには、生徒さん自身が自分自身に目を向けることしかありません。自分の態度を見つめなおし、また「自分は本当にどうしたいのか」を問い直してもらうことです。
(偉そうなことを言っていますが、私は確実に足を引っ張る側の学生でした(笑)。中高一貫校に通っていたことで難を逃れたにすぎません)
西宮市は内申点の面で不利なのか?
結論から申し上げますと、不利でないことはないが、問題になるほどではありません。あいまいな答えで申し訳ないですが…その理由を説明していきますね。
まず「西宮市が内申で不利」というのが、どういう理屈かというと…
(A)西宮市は比較的、学力が高い子が多い
→(B)学力が高い子が多いので、テストが難しくなり内申点下がる
→(C)入試に不利になる
というものです。これについて1つ1つ検証してみましょう。
イメージ先行かと思いきや、意外と本当です。全国学力調査では、西宮市はおおむね毎年、すべての科目で全国平均を上回っています。下表は西宮市が公表している「学力調査の概要」のグラフから作成した偏差値の比較です。特に算数や数学で、良好な結果を示しています。

兵庫県の平均は全国とおおむね同等というデータがありますので、兵庫県内で見ても西宮市は「学力の高い生徒が多い」と言えます。

ただし、西宮市は私立中学への進学率が全国平均よりも高く、彼らの得点が平均を押し上げている部分もあるでしょう。
公立中学校だけで偏差値をとると、もう少し低くなるかもしれません。また、もちろん公立の学校間でのばらつきもあるでしょう。
これも本当でしょう。
まず、公立中学校のテストは担当教員が自ら作ります。そして「テストは平均60点くらいになるように作る」のが、中学校教員の皆さんの共通認識のようです(例外もあります)。
何十人も100点を取るような簡単なテストでは評価ができませんし、難しすぎてもダメ。点数をいい感じに分布させるには、平均を60点あたりにするのは妥当です。
そうすると、テストを受ける集団の学力が高ければ、テストが難しくなるのは当然。全国平均に合わせて作ったら100点が多くなりすぎてしまい、適切な評価がしにくくなります。よって、西宮市では公立中学校のテストが難しくなりがちだと言えます。

私の印象から言っても、他地域に比べ西宮市の公立中学校のテストは難しいと感じています。特に数学はあまり他の地域では見られない「100点を取らせまいとするような問題」が数問含まれているように思います。
これは微妙なところです。
兵庫県の公立高校入試を受ける人のうち、「西宮市の中学生の内申点が他より低い」のかというと、そういうわけではありません。学力が高くても、周りのレベルが高いので平均的に評価されがちということです。
「ということは、がんばっても勉強してもそこまで高く評価されないので入試に不利ではないか」と思われそうですが、そうとも言い切れません。入試は学区ごとに行われ、ほとんどの生徒は学区内、自宅の近所の学校を受験しますので、結局は自分たちの周りの人たちとの競争になり、おおむね同じ基準でつけられた内申点で戦うことになります。
他の学区の学校、たとえば西宮市から全県区の神戸高校の総合理学科を受験する場合には少し不利に働くかもしれません。

結論としては「不利になることはあるかもしれないが、ささいなこと」です。神戸総理にチャレンジするには、多少の内申点の不利は問題にならないくらいの学力が必要です。
なお、第2学区内では、おとなりの宝塚市も教育熱心で、学力調査でよい結果を示しています。
「学力の高いエリアで損をしている」と考えるよりも「周りの頑張りに刺激を受けられて得している」とプラスにとらえることが重要でしょう。