ここでは私の12年100名超の家庭教師経験から、学習効果の高い中学受験・理科の教材を厳選し、ご紹介しようと思います。大手T社で事務スタッフとしてアルバイトしている時から、生徒さんの教材選びの相談には乗り続けています。
今でも家庭教師の仕事の中で、生徒さんの反応・感想にふれたり、毎日のように書店の参考書コーナーで研究を続けていますので、市販の教材に関する情報は常に更新しています。
これから化学の受験勉強を始めようと思っていたところです。どの問題集を選ぶかで、勉強の効果が全然ちがいそうで悩みます…
本屋さんに行ってもたくさんあってよくわからないんですよね。あと参考書もいろいろあって…
もくじ
基本的に参考書は不要!「学校の教科書」さえあればいい!
参考書の話がありましたが、参考書は必要ありません。教科書でじゅうぶん、というか、教科書が最強の参考書なんです。
え?そうなんですか?あんなにたくさん本屋さんに並んでるのに。
実際の入試問題を研究してみれば分かりますが、各大学の問題は教科書をすみずみまで読んでいることを前提につくられています。
書店で売られている参考書は、たしかに色々と工夫が凝らされていますね。手に取ってもらいやすくするため、イラストを使い紙面を大きく使って解説されています。そのぶんカットされている情報も多いので、参考書一冊だけに頼り切るのはとてもリスキーです。
なるほど、考えてみればそうですね。
大切なのは、いかに記憶と印象に残すかです。そのためには、文章の質はもちろん、写真などの資料も豊富な教科書を使うのが最も効果的です。
教科書は作成にかかわっているプロフェッショナルの数と熱量がケタ違いなのです。これだけのクオリティの参考書はないですよ。
ただ一点、教科書はその性質上、暗記に便利なゴロ合わせなどは載っていないので、覚えにくい事項はネットなどで調べて教科書に書き込んでいくのがよいでしょう。
あ、でも通っている学校によって教科書の出版社って違いますよね。オススメとかあるんでしょうか。
それと、友達が「化学の授業を選択してなかったけど、進路変更して化学が必要になった」と言ってました。そういう場合教科書って手に入るんでしょうか。
西宮市の高校では東京書籍を使っている学校が多い印象です。
1つの出版社が高校のレベルに合わせて複数の教科書を出しています。志望校のレベルに合わせて買い直してもいいと思います。
あと、汚れちゃって読む気にならないとか、そういう場合も買い替えてしまいましょう。
え?教科書ってふつうに買えるんですか?
買えますよ!ふつうの本屋さんではなかなか扱っていないですが…大きな街には教科書を扱う書店がありますし、Amazonや楽天でも買えます。
ちなみに、化学基礎「新編」はとっつきやすく易しめの内容になっています。
用語整理、基礎がためには数研出版「リードLightノート」
いきなり問題集をやり始めてもチンプンカンプンで…
やる気をなくしてしまいそうです。
そうですね。高校の理科はいろいろな専門用語を使いますので、用語の意味が分からないまま問題集を解き始めてもあまり意味がありません。英語でいえば、ある程度の単語力がなければ問題文さえ読むことができないのと一緒です。
なので、本格的に定番問題集を解く前に、用語整理をはじめとする基礎固めをしておくことは大事です。
教科書を読むしかないんでしょうか?
最近では、効率よく用語整理と基礎固めができるまとめノート形式のテキストが人気ですね。B5~A4サイズくらいでちょっと薄めのやつです。
その中でもおすすめなのが、数研出版の「リードLightノート」です。
単元ごとにシンプルにまとまっていますね。穴埋め式だから進めやすそうです。
教科書を横において、穴埋めと一問一答を赤ペンで書きこんでいく。そうすればあとからカラーシートでチェックできるし、おすすめです。
基本的な練習問題もついているので、共通テスト6~7割レベルなら、これ1冊カンペキにしておけば対応できるでしょう。
1冊がぶ厚くないし、これならやる気が出そう。
問題集を選ぶうえで大事なのは、「最後までやり切るイメージができるか」です。基礎がためをするのであれば、このリードLightノートは薄さと情報量のバランスが一番良いですね。
数研出版「実戦化学重要問題集」は 定番中の定番
「いろんな問題集をやるんじゃなくて1冊を仕上げなさい」とよく言われるのですが…その1冊ってどれがいいんでしょうか。
そうですね。問題集1冊仕上げることで、抜けのない知識を得られますし、何より自信につながります。
そういう目的にピッタリなのが数研出版の「実戦化学重要問題集」です。
あ、この表紙見たことある!たしか兄も持ってたし、塾の問題集の棚にもあります。
高校化学では、定番中の定番の問題集です。まさに「これさえやっておけば」という感じですね。
定番になるには理由があります。大学入試の化学で出題される問題がほぼ完全に網羅されていますし、毎年改訂があって新傾向の対策もばっちりです。
じゃあ、兄のおさがりがあっても、できれば新しく買った方がいいんですね。
そうですね。あと実教出版「エクセル化学」も網羅的で良問ぞろいの良い問題集です。
学校で配られることが多いので、持っている人はこちらを仕上げても良いと思いますよ。
理系最難関大の2次対策には「化学の新演習」と「化学の新研究」
私、京都大学を目指していて、かなり難しい問題が出ると思うんですが…
理系最難関大への対策には「実戦化学重要問題集」だけではちょっと足りませんね。おすすめは三省堂「化学の新演習」と「化学の新研究」の併用です。どちらも無駄がなく詳細な解説が特徴です。ただ、使いこなすにはある程度の実力がついていることが前提です。
「化学の新研究」は参考書なんですね。
もちろん、ほとんどの大学では教科書を逸脱する知識が問われることはないのですが…東大・京大レベルの対策をする上では参考書「化学の新研究」 も使った方が効率的ですね。
過去問演習に入る前の総仕上げとして、「化学の新研究」をそばにおいて「化学の新演習」を2周するくらいのイメージでいいと思います。
これが終わったら、いよいよ過去問か~。身が引き締まりますね。
(おまけ)おすすめ化学読み物
化学に限った話ではないですが、勉強の効率を最もアップさせるのは「興味を持つこと」です。最後に、化学をテーマにした面白い本を2つ紹介します。
まずは、「ロウソクの科学」が教えてくれること。「ロウソクの科学」は化学・物理学者ファラデーがイギリスの王立研究所で一般の人たちに向けて行った実験・講演をまとめた名著で、これに新しく写真や補足を加えたものです。
ファラデーといえば、電池と電気分解のところで出てくる人だっけ。1molの電子がもつ電気量が9.65×10⁴クーロンで、それをファラデー定数というんだったはず。
よくおぼえていますね。ファラデーは多くの発見をした偉大な科学者ですが、一般の人たちに対してワクワクするような実験をみせながら世界を形作るものの仕組みを解き明かしていくような講演を行いました。
きれいなカラーの写真がたくさんあって「なんでこうなるんだろう?」「次どうなるんだろう?」って感じでどんどん読めますね。
「どうしてそうなるんだろう?」という疑問は、当時講演を聞いた人も感じたはずですし、当時の息づかいが感じられて面白いですよね。そして世代を超えたその疑問が化学の一番の面白さにつながるのだと思います。ファラデーはその面白さを「伝えること」に努力を惜しまなかったそうです。
次は「絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている」です。
面白そう!歴史と化学って全然関係ない感じするけど…
「化学で勉強するいろんな物質を、もし人類がつくれなかったら」って考えたら、ものすごく影響を与えているはずよね。
そういうことです。
化学の大発見が歴史を変えることももちろんありますし、世界的な動きを受けて発明される科学的知見もあるんです。産業革命による人口爆発からアンモニアの大量合成が必要になり、そこからハーバー・ボッシュ法が生まれたように。
歴史と化学は切っても切れない間柄なんですね。
コロナ禍でワクチンや治療薬の開発が活発化している今の状況も、何年か経って考えたら「歴史と化学」ですよね。なんだか化学をより身近に考えられそうです。
その通り!
大事なのは化学を「遠い世界のこと」と考えないこと。普段の生活のまわりにある金属やセラミックス、合成繊維、プラスチック類、電池、薬などいずれも化学の恩恵を受けているんですよね。