西宮の家庭教師ダイアログによる過去問解説。今回は須磨学園中学校の過去問です。
もくじ
1 植物の屈性
植物の屈性についての問題です。須磨中の問題にしては本文の長さも短く、しっかり読めば正解にたどり着ける問題ばかりです。
マカラスムギは芽生えの観察・実験でよく使われます。ちなみに「マラカス」ではなく、「マカラス」です。漢字で書くと「真烏麦」、オーツとかエンバクともいいますね。
問1 難易度:★☆☆☆☆
イネの仲間の植物は単子葉植物です。細い平行脈の葉からもわかりますね。
よって、茎の断面は形成層をもたず、維管束が散在している②が正解だと分かります。
問2 難易度:★★☆☆☆
一つ一つ吟味してみましょう。
① 赤い光だけが透過しています。生物の応答は関係ありません。×
② 虫が日光の差す方向感知し、それを基準にして飛んでいます。〇
③ 目に光を当てると、目の中に入る光を減らすためひとみは小さくなります。×
④ 日に焼けると皮ふが傷害され、その反応として肌が赤くなります。〇
⑤ 光に対する応答ではなく、刺激に対して光による応答を行っていますね。×
よって、②と④。
問3 難易度:★☆☆☆☆
「幼葉しょうの先たん部分が光を受け取ることで、幼葉しょうが光のくる方向に曲がるようになる」と結論付けられたので、ここから実験の結果を推測してみましょう。
<ア> 何も処置されていないので、幼葉しょうが光のくる方向に曲がるはずです。よって光の来る方向に曲がります。①
<イ> 光を受け取る先たん部分が切り取られているので、曲がりません。③
<ウ> 光を通さないキャップをかぶせているので、曲がりません。③
<エ> キャップをかぶせてはいますが、光を通すので【ア】と同じ状況です。①
問4 難易度:★★☆☆☆
<エ>をおこなったのは、<エ>と<ウ>を比較することで、<ウ>が曲がらなかったという結果が、マカラスムギの先たん部分にキャップをつけた影響ではなく、先たん部分に光があたらないことによるものだと確認するためです。
問5 難易度:★★☆☆☆
3分間光を消している間に5分の1だけ戻るので、それまでに曲がった角度に0.8をかければよいことになります。
<1回目の操作> 5×0.8=4[度]
<2回目の操作> (4+5)×0.8=7.2[度]
<3回目の操作> (7.2+5)×0.8=9.76≒9.8[度]
問6 難易度:★★☆☆☆
問題文に『本文の「屈性」 についての説明を参考にして』と、わざわざ下線を引いて強調してくれていますので、そこにヒントがあると分かります。
本文に「茎が光のくる方向や重力に逆らう方向へ曲がって伸びていることが多くあります」と書いてあります。つまり、重力がかかっているとき下向きの重力に逆らって茎は上に伸びているということが分かります。逆に、重力がないときにはそのはたらきがなく、別の屈性の影響を受けやすくなると予想できます。
曲がりの大きさの変化:大きくなる
理由:重力屈性が小さくなることで、光屈性の影響を受けやすくなると考えられるから。(37字)
発芽したばかりの幼葉しょうは、種子にたくわえられた栄養分がなくなるまでに光合成しやすい場所に葉を出さないといけないので、光のある方向であったり、なるべく地面から離れた上の方へ茎をのばす性質を持っています。
2 アンモニアの生産方法
アンモニアの生産方法についての問題です。ハーバー・ボッシュ法は高校化学で学ぶ内容で、問題文ではかなり本質的なところまでせまる高レベルな問題となっています。問題文とグラフからどれだけの情報を読み取れるかがカギとなっています。
問1 難易度:★★☆☆☆
2019年、リチウムイオン電池に関する研究でノーベル化学賞を受賞したのは吉野彰氏です。
根岸英一氏と鈴木章氏は、「パラジウム触媒を用いたクロスカップリング」という、炭素をつないで有機化合物を人工的に合成する方法を開発し、2010年にノーベル化学賞を共同受賞しました。
野依良治氏は「キラル触媒による不斉反応の研究」で2001年にノーベル化学賞を受賞しました。
問2 難易度:★☆☆☆☆
リチウムイオン電池により普及した電化製品といえば、携帯電話(スマートフォン)、タブレット、ノートパソコン、デジタルカメラ、ドローンなどです。
電化製品に限らなければ電気自動車、ハイブリッドカーなども含まれるでしょう。
問3 難易度:★☆☆☆☆
アンモニアはいろいろな特徴をもっているので、水素やちっ素と異なる点を挙げるのはそこまで難しいことではありません。以下の特徴から2つ書ければ正解となります。
・刺激臭がある
・非常に水に溶けやすい
・水に溶けてアルカリ性を示す
・人体に有毒である
また、アンモニアがあることをしらべる方法として「ガラス棒につけた濃塩酸を近づけると白煙を生じる」があり、これを書いても正解となるでしょう。
問4 難易度:★★☆☆☆
本文に「28gのちっ素と6gの水素を容器に入れて反応させたとき、もし、すべてのちっ素とすべての水素が反応したとすると、アンモニアは34g生じます」とあります。
【実験】において、6.8gのアンモニアが生じているので、反応した窒素と水素の重さはそれぞれ、
ちっ素:6.8× \frac{28}{34} =5.6[g]
水素 :6.8× \frac{6}{34} =1.2[g]
「28gのちっ素と6gの水素」を容器に入れているので、残った気体の重さはそれぞれ、
ちっ素:28-5.6=22.4[g]
水素 :6-1.2=4.8[g]
問5 難易度:★★☆☆☆
ちっ素と水素からアンモニアが生じるなどの化学反応では、反応の前後では原子の組み合わせが変わるだけで原子の数自体は変わらず、全体の重さも変わりません。
このことを「質量保存の法則」といいます。
よって⑤が正解です。
問6 難易度:★★☆☆☆
ちっ素と水素からアンモニアを生じるときに加える鉄や、過酸化水素水から酸素を発生させるときに加える二酸化マンガンなど、反応を促進させる目的でくわえる物質のことを「触媒」といいます。触媒は反応のスピードを速めますが、反応の前後で自分自身は変化しないという特徴があります。
反応を促進させる触媒としてはたらくから。
問7 難易度:★★☆☆☆
以下の点に気を付けてグラフをかきこみましょう。
・グラフの傾きを「327℃」と「527℃」の中間にする
・グラフが曲がるところはなだらかな曲線とする
・グラフの変化しなくなるところを「327℃」と「527℃」の中間にする
問8 難易度:★★★☆☆
グラフを見ると、たしかに低い温度の方がたくさんのアンモニアが得られますが、アンモニアができる速さが遅く、多くの時間がかかることが分かります。
反応に時間がかかり効率が悪いから。(17字)
3 (準備中)
準備中です。
4 地震と断層
「地震と断層」についての問題です。兵庫県の中学受験では頻出の阪神淡路大震災をテーマにした問題です。難易度自体はそこまで難しくないです。初期微動継続時間を使う問題などは頻出なので、この機会に解けるようにしておきましょう。
問1 難易度:★☆☆☆☆
選択肢を一つ一つ吟味します。
① 現在使われている震度は、1~7の10段階で分けられています。
1、2、3、4、5弱、5強、6弱、6強、7の10段階です。
② マグニチュードが2大きくなると地震のエネルギーは1000倍になります。
③ 地震は特定の地域に集中して発生します。日本は地震の多い地域として有名ですね。
④ 地震による津波は、震源が海底にある場合のみ起こります。
よって、正解は③です。
ちなみに、津波は火山活動や山体崩壊、隕石衝突など、地震以外の原因によって起こることもあります。
2022年1月、南半球の島国、トンガ沖の海底火山で発生した大規模な噴火とその後の津波は記憶に新しく、今後数年は受験でも問われる可能性があります。
問2 難易度:★★☆☆☆
地下のつくり(どんな地層か)により多少の差はありますが、地震の揺れは球面がふくらんでいくように伝わるので、 震源に近い方から揺れ始め、遠いほど揺れが届くのに時間がかかります。また、震源に近いほど揺れは大きく、震源から離れるほど小さくなります。
よって、各地の震度と揺れ始めの時刻は震央(震源の真上の地上)を中心に同心円上に分布します。
問題の地図上で同じ揺れ始めの時間が同じ地点を線でつなぐと、同心円となり、その中心は⑦に存在することが分かります。
問3 難易度:★★★☆☆
まず、断層は大きく分けて下図の4つ「正断層」「逆断層」「左横ずれ断層」「右横ずれ断層」に分けられます。これをしっかり確認しておきましょう。
野島断層では「断層の南東側が北西側に比べ最大1.4mもり上がり、断層の南東側が南西方向へ最大2.1mずれました」とあります。
「断層の南東側」とあるので、断層じたいは北東-南西方向に走り、地面を二つに分けていることが分かります。まず、南東側が南西方向にずれているので、下図のようなズレが生じていますから、右横ずれ断層の成分があることが分かります。
また、 「南東側が北西側に比べ最大1.4mもり上がり」とありますから、地面の持ち上がる正断層もしくは逆断層の成分を持つことを示しています。ただし、問題文の情報からはどちらなのかを判断することはできません。
ここからは知識問題です。日本列島はプレートどうしがぶつかり、せめぎ合ってできているという性質上、両側より圧縮されておこる逆断層の方が正断層よりも圧倒的に多くなっています。野島断層もその例にもれず、 「南東側が北西側に比べ最大1.4mもり上が」ったのは、両側から圧迫されて逆断層が生じたためです。
よって、野島断層は、「逆断層」と「右横ずれ断層」の両方の性質をもっており、②と③を選べばよいことになります。
断層の種類に関する問題は2021年度入試第1回にも出題されています。これからも頻出であるとみていいでしょう。上図に示した4種類の断層はしっかり頭に入れておきましょう。
問4 難易度:★★☆☆☆
(a) 地震波を観測するとき、3つで1セットの地震計を用いるのは、東西・南北・上下の3方向のゆれを記録し、立体的にゆれをとらえるためです。
(b)神戸と大阪を比較して差をとると下表のようになります。
観測地点 | 震源から の距離 | P波 とう達時刻 | S波 とう達時刻 |
神戸 | 24km | 5時46分56秒 | 5時47分00秒 |
大阪 | 48km | 5時47分00秒 | 5時47分08秒 |
差(大阪-神戸) | 24km | 4秒 | 8秒 |
よって、24kmの距離をP波は4秒、S波は8秒で移動することから、
P波は6km/秒、S波は3km/秒の速さであることが分かります。
問題文の「震源から42kmの地点に地震計があり、P波のとう達と同時に地震を判定し、その10秒後に 震源から90kmの住宅地に緊急地震速報を伝えた」という状況を考えてみましょう。
地震が発生してから地震計のある地点までP波がとう達するまでの時間は、42÷6=7秒で、その10秒後に住宅地に緊急地震速報が伝わります。よって、 地震が発生してから住宅地に緊急地震速報が伝わるまでの時間は17秒です。
また、震源から90kmはなれた住宅地までS波が伝わるのにかかる時間は、90÷3=30秒です。
よって、住民が速報を受け取ってからS波がとう達するまでの時間は、
30-17=13(秒)
問5 難易度:★★★☆☆
ある地点にP波がとう達してからS波がとう達するまでの時間を初期微動継続時間といい、震源からの距離と比例します。
神戸、大阪、東京における初期微動継続時間は(S波とう達時刻)-(P波とう達時刻)の差によって計算できます。
また、神戸と大阪のデータから、初期微動継続時間1秒が震源からの距離6kmに相当することが分かります。よって、高野山においては11秒、名古屋においては31秒と計算できます。
観測地点 | 震源から の距離 | P波 とう達時刻 | S波 とう達時刻 | 初期微動 継続時間 |
神戸 | 24km | 5時46分56秒 | 5時47分00秒 | 4秒 |
大阪 | 48km | 5時47分00秒 | 5時47分08秒 | 8秒 |
高野山 | 66km | 5時47分03秒 | (ア) | 11秒 |
名古屋 | 186km | (イ) | 5時47分54秒 | 31秒 |
東京 | (ウ) | 5時48分07秒 | 5時49分22秒 | 75秒 |
よって、
(ア)= 5時47分03秒 + 11秒 = 5時47分14秒
(イ)= 5時47分54秒 - 31秒 = 5時47分23秒
(ウ)= 75 × 6 = 450(km)