【須磨学園中学】入試解説 2021年度 理科 第3回 過去問

今回は須磨学園中学校の入試解説 2021年度第3回 理科の過去問です。

1 植物のガス交換と生物多様性

 

西宮の家庭教師 かきた
西宮の家庭教師 かきた

植物のガス交換と生物多様性に関する問題です。問6では多様度指数という聞きなれない指標がでてきます。単なる知識ではなく理解力や思考力を試される、須磨中らしい問題です。

問1 難易度:★★☆☆☆

気孔から水(水蒸気)が出ていくことを「蒸散」といいます。砂漠などの乾燥した環境に生息する植物は、なるべく気温の低い夜間に気孔を開いて余計な蒸散を防ぎます。

問2 難易度:★★☆☆☆

「見た目やはたらきは異なっているが起源が同じもの」を相同器官といい、逆に「起源はちがうが見た目やはたらきが似ているもの」を相似器官といいます。

①ヒトの手とコウモリの翼
→ 相同器官です。

②サツマイモの食用部分とジャガイモの食用部分
→ サツマイモの食用部分は「根」にあたるのに対し、ジャガイモは「茎(地下茎)」なので、起源は違います。でも栄養を蓄え、種子なしで子孫を残すことができるという共通のはたらきがありますので、これらは「相似器官」です。

③トンボの羽とハヤブサの翼
→ どちらもはばたいて飛行するための器官ですが、起源が違うので「相似器官」です

④イソギンチャクの足ばんとヒヤシンスの根
→ 当然、起源は違いますし、働きも違います。見た目もそんなに似ているわけでもないのですぐに消去できます。

問3 難易度:★★☆☆☆

須磨学園中によくある、理科で国語力・読解力を問う問題ですね。

「二酸化炭素は夜間にリンゴ酸として細胞内に蓄えられ,昼間に気孔を閉じ た状態で蓄えたリンゴ酸を分解し、細胞内で二酸化炭素を作り出し光合成をします」とあります。

よって、夜間は昼間に比べリンゴ酸が多く含まれています。リンゴ酸のように「〇〇酸」という名前がついている物質は、その名の通り酸っぱい味がします。よって③。

問4 難易度:★★★☆☆

図の中で「葉の表に多く気孔をもつ」ことでメリットがありそうなのは、②浮葉植物です。

②【理由】空気に触れている葉の表に気孔を集める方がガス交換の効率が良いから。

問5 難易度:★★☆☆☆

図2を見ると、地点Aに比べて地点Bの方が、深くなっても明るさが保たれている、つまり光が深くまで届いていることが読み取れます。沈水植物も生育のためには光合成をすることが必要なので、より深くまで生育できるのは地点Bです。

問6 難易度:★★★★☆

(a)例にしたがって多様度指数を計算すると、

多様度指数=1-(\frac{20}{100}×\frac{20}{100}\frac{50}{100}×\frac{50}{100}\frac{10}{100}×\frac{10}{100}\frac{10}{100}×\frac{10}{100}\frac{10}{100}×\frac{10}{100}
     =1-(\frac{4}{100}\frac{25}{100}\frac{1}{100}\frac{1}{100}\frac{1}{100}
     =0.68

(b)300個体の水生植物が、4種にどのように割り振られると「多様度指数」が大きくなるかを試算してみましょう。

・1種だけ多い場合(210個体、30個体、30個体、30個体)
 1-(\frac{210}{300}×\frac{210}{300}\frac{30}{300}×\frac{30}{300}\frac{30}{300}×\frac{30}{300}\frac{30}{300}×\frac{30}{300}) =0.48

・2種が多い場合(120個体、120個体、30個体、30個体)
 1-(\frac{120}{300}×\frac{120}{300}\frac{120}{300}×\frac{120}{300}\frac{30}{300}×\frac{30}{300}\frac{30}{300}×\frac{30}{300}) =0.66

・1種だけ少ない場合(90個体、90個体、90個体、30個体)
 1-(\frac{90}{300}×\frac{90}{300}\frac{90}{300}×\frac{90}{300}\frac{90}{300}×\frac{90}{300}\frac{30}{300}×\frac{30}{300}) =0.72

・個体数が均等にくらしている場合(全種75個体ずつ)
 1-(\frac{75}{300}×\frac{75}{300}\frac{75}{300}×\frac{75}{300}\frac{75}{300}×\frac{75}{300}\frac{75}{300}×\frac{75}{300}) =0.75

このように、同じ4種でも個体数のかたよりが少なければ少ないほど、多様度指数が大きくなることが分かります。よって、最もかたよりのない、均等に全種75個体くらしているときが最も多様度指数が大きく、0.75となります。

2 電気分解

 

西宮の家庭教師 かきた
西宮の家庭教師 かきた

電気分解に関する問題です。設問8つのうち、4つが比例を使った問題です。比例の考え方をしっかり身に付けられているかがカギです。

問1 難易度:★☆☆☆☆

気体Aはポンと音を立てて燃えたことから、水素です。
気体Bは線香を激しく燃やしたことから、酸素です。

問2 難易度:★★☆☆☆

純粋な水はほとんど電流が流れません。ここに食塩や水酸化ナトリウムなどの「電解質」と呼ばれる物質を溶かすと電流がよく流れるようになります。15字ではあまりたくさんのことは説明できませんね。シンプルに答えましょう。

電流が流れやすくするため。(13字)

問3 難易度:★★☆☆☆

図3のグラフより発生した気体Aと気体Bの体積比は2:1であることがわかります。また、

Aの密度:Bの密度=0.09:1.5=3:50

なので、発生した気体の重さの比は、

Aの重さ:Bの重さ=3×2:50×1=6:50=3:25

問4 難易度:★☆☆☆☆

図3のグラフをみると、5分間の電気分解で気体Aが25㎖、気体Bが12.5㎖発生することが分かります。なので、3分間で発生する気体Bの体積は、

12.5×\frac{3}{5}=7.5(㎖)

問5 難易度:★★★☆☆

0.8倍の電流の大きさで電気分解をして40㎖の気体Aが発生しているので、もし同じ時間、元の電流の大きさで電気分解していれば、40÷0.8=50(㎖)の気体Aが発生していたことになります。

また 元の電流の大きさで の5分間の電気分解で気体Aの発生が25㎖なので、10分間電気分解していることになります。

問6 難易度:★★★☆☆

電流の大きさを変えたとしても、発生する気体Aと気体Bの体積比が変化することはありません。

【実験2】で気体Aが25㎖、気体Bが12.5㎖発生しています。【実験3】では【実験】と比べて電流の大きさを2倍、時間を \frac{2}{5}倍にしているので、追加で発生する気体Aの体積は、

25×2×\frac{2}{5}=20(㎖)

よって、グラフは左のようになります。

問7 難易度:★★☆☆☆

電気分解を続けると、そこに含まれる塩素と水よう液の外に出てしまい、塩化銅の濃度は低くなります。それにより、水よう液の青色は薄くなります。

(理由)電気分解により水よう液の濃度が低くなるから。(22字)

問8 難易度:★★☆☆☆

塩素は水に溶けてしまうので、問題のような装置ではほとんど集めることができません。

発生した塩素が水に溶けてしまうため。(18字)

3 振り子の周期と軌道

 

西宮の家庭教師 かきた
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振り子の周期と軌道に関する問題です。難しい内容ではありますが、問題文でしっかり誘導してくれていますので、長くても飛ばさずていねいに読むくせをつけましょう。問6は軌道の図から前後・左右の周期を読み取る必要があり、難問だと思います。

問1 難易度:★☆☆☆☆

(力学的エネルギー)=(位置エネルギー)+(運動エネルギー)

力学的エネルギーは外部から力を加えられない限り一定となります。位置が低いほど運動エネルギーは大きくなります。

つまり、①の高さまで持ち上げたおもりを離すと、位置エネルギーが減っていき、その分運動エネルギーが大きくなります。そして、一番下の③でのおもりの速さは最大となります。③を過ぎたおもりは、運動エネルギーが減っていき、位置エネルギーが大きくなります。

よって、速度は、③>④>②>①

問2 難易度:★★☆☆☆

(a)振り子の実験では、ストップウォッチを押すタイミングなどによって誤差が生まれます。10往復で測る場合、1往復で測る場合と比べて、誤差を10分の1にすることができます。

【解答】
ストップウォッチを押すタイミングのズレによる誤差を小さくするため。

(b)表1より、長さ60cmの振り子が10往復するのにかかる時間は15.5秒なので、1往復に必要な時間(周期)は1.55秒。

問3 難易度:★★☆☆☆

図2のような振り子装置では、100cmの糸が途中でくぎに引っかかると、そこから40cmの振り子として振る舞います。

そのとき、力学的エネルギーはそのまま保持されるので、おもりは手を離した高さまで上がります。

上の図のように、①→②→③→④→①…の順で振り子が振れるとき、①と④の間は100cmの振り子と同じ、②と③は40cmの振り子と同じ動きをします。よって、この振り子の周期は、100cmと40cmの振り子のそれぞれの周期の半分を足したものになります。

よって、20÷10÷2+12.5÷10÷2=1.625(秒)

問4 難易度:★☆☆☆☆

問題文の説明をしっかり読みましょう。

「前後の方向におもりをもち上げてそっとはなすと、AとBの長さを合わせた120cmのふり子として前後にふれました」とありますので、前後にのみふれさせたときの周期は表1より、

22÷10=2.2(秒)

また「左右の方向におもりをもち上げてそっとはなすと、30cmのふり子としてAの部分だけが左右にふれました」とありますので、左右にのみふれさせたときの周期は表1より、

11÷10=1.1(秒)

問5 難易度:★★★☆☆

図5を見ると、左前Dを出発してEを通り、左後に至ったたのち、またEを通ってDに戻ります。

この動きの間に、左右の動きだけを見ると2往復しているいて、前後の動きは1往復であることが分かります。これは、問4で求めた前後の動きの周期が左右の動きの周期の2倍であることと対応しています。

DからEまでの動きを考えると左右の周期の半分であり、前後の周期の4分の1です。

よって、Dで おもりをはなしてからEを初めて通過するまでの時間は、
1.1÷2=0.55(秒)

問6 難易度:★★★★☆

問5で分かったように、「どのような軌道を描くのか」と「左右・前後の周期の比」は深く関連しています。

選択肢①~⑥の図について、点Dを出発してから再び点Dに戻るまでに左右・前後でそれぞれ何往復しているかを整理すると、以下の赤字のようになります。

(a)AとBを合わせた長さが180cmなので、前後の周期は2.7秒だと分かります。また、Aの長さが20cmなので、左右の周期は0.9秒だと分かります。

(前後の周期):(左右の周期)=3:1なので、前後に1往復している間に左右に3往復している④を選べば良いことになります。

(b)AとBを合わせた長さが180cmなので、前後の周期は2.7秒、Aの長さが80cmなので、左右の周期は1.8秒だと分かります。

(前後の周期):(左右の周期)=3:2なので、前後に2往復している間に左右に3往復している③を選べば良いことになります。

4 飽和水蒸気量とフェーン現象

西宮の家庭教師 かきた
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気候に関する問題です。フェーン現象はもはや定番のテーマですね。取っつきにくい内容だとは思いますが、この機会にカンペキにしておきましょう。

問1 難易度:★☆☆☆☆

雨を降らせる雲は「積乱雲」と「乱層雲」です。「乱」の字がつくと雨を降らせると覚えましょう。

問2 難易度:★★☆☆☆

① 空気があたたまると、空気が膨張し軽くなって上昇気流が発生します。

② つめたい空気へあたたかい空気が押し寄せると、あたたかくて軽い空気が上昇します。

③ 山などに風がふきつけると上昇します。

④ 高気圧では下降気流が発生します。だから雲ができにくいんでしたね。

⑤ 台風の目では下降気流が発生しますが、その周りでは上昇気流が発生しています。

問3 難易度:★★☆☆☆

グラフのままだとよくわからないので、①~④の空気について文章で表した方が分かりやすいかもしれません。

① 10℃の空気であり、5℃まで冷やすと水滴が出始めた。

② 10℃の空気であり、冷やしはじめてすぐに水滴が出始めた。

③ 15℃の空気であり、冷やしはじめてすぐに水滴が出始めた。

④ 15℃の空気であり、5℃まで冷やすと水滴が出始めた。

このように整理すると、5℃まで冷やしたときに最も多くの水が出るのは明らかに③だと分かりますね。

問4 難易度:★★☆☆☆

雲は「水蒸気を含む空気が上昇気流によって上昇し、気温が下がることによって水蒸気が水滴や氷に変わる」ことでできます。

よって図中の□は水蒸気だと分かり、〇と☆が水滴か氷ということになります。より高いところにある方が気温も低くなるので☆が氷、〇が水滴だと分かります。よって、⑤。

問5 難易度:★★★☆☆

BC間は雲の影響を考える必要がないので、2000m下る過程で100mにつき1℃上がります。

Cは25℃なので、Bの気温は、25ー20×1=5℃

問6 難易度:★★★☆☆

(ア)雲つぶをふくまない(100mあたり1℃下がる)上昇
(イ)雲つぶをふくむ(100mあたり0.5℃下がる)上昇

AからBまで、(ア)と(イ)で合計2000m上昇することで15℃下がります。これはつるかめ算ですね。

つるかめ算を解くと、雲つぶをふくまない上昇1000mと雲つぶをふくむ上昇1000mだと分かります。よって雲ができ始めたのは標高1000mです。

フェーン現象
西宮の家庭教師 かきた
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山の斜面を空気が上昇すると空気は冷やされます。これがしめった空気で雲をつくりながらだと温度が下がりにくくなります。
雲をつくり雨を降らせることは「空気がもっていた水蒸気を山の斜面に落としていくこと」です。山頂に到達した時点で、水蒸気はかなり失われています。この空気が反対側に下りるときには温度が上昇していきます。このときの温度変化の幅は雲をつくっていないときと同じなので、山を上るときよりも大きくなります。だから、山の下では登る前よりも温度は高く乾燥した空気になっています。これが「フェーン現象」です。

問7 難易度:★★★☆☆

標高1000mまで上昇したときに雲ができ始めるので、 A地点における空気の露点は10℃で、グラフより含まれる水蒸気量は9g/㎥です。

A地点(20℃)における飽和水蒸気量は17g/㎥なので、

(A地点の湿度)=\frac{9}{17}×100≒53(%)

B地点(5℃)までは雲ができているので飽和水蒸気と同じ水蒸気をもっています。この空気がC地点(25℃)までやってきます。

グラフよりB地点(5℃)の飽和水蒸気量は7g/㎥、C地点(25℃)の飽和水蒸気量は22.5g/㎥です。よって、

(C地点の湿度)=\frac{7}{22.5}×100≒31(%)

※ グラフがかなり半端なところを示しているので模範解答と異なるかもしれません。

 

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