今回は須磨学園中学校の入試解説、2021年度 理科 第1回の過去問です。
もくじ
1 生物と環境
生物と環境についての問題です。問7を除き、常識的な知識のみで解ける問題になっていますね。環境と生物のかかわりについての問題は近年頻出ですので、間違えた問題があったらしっかり復習しておきましょう。
問7は除去法という特殊な調査法についての問題ですが、ていねいに説明を読んで理解できればそこまで難しい問題ではありません。
問1 難易度:★★☆☆☆
生物が生息している環境に影響を与える作用のことを、環境形成作用といいます。その例としては、「晴れた日の昼間に、植物プランクトンの光合成によって、湖の浅い所の酸素の量が夜よりも多くなる」など、生物が生物でないものに影響を与えているものを選びます。
問2 難易度:★★☆☆☆
一つ一つ吟味していきましょう。
① 魚類は全て卵を産みますが、母親のおなかの中でふ化(卵胎生)する魚もいます。
② すべての魚は脊椎動物です。
③ 魚類の中でも鮫などは軟骨魚類といい、全身の骨が軟骨のものがいます。
④ サケやウナギなどは生育・産卵の過程で海水と淡水の両方を行き来します。
問3 難易度:★★☆☆☆
① カタツムリは陸に住む巻貝の仲間で、軟体動物というグループに属します。
② ムカデは節足動物ですが、多足類に属します。
③ アリは昆虫類ですね。
④ クモは節足動物ですが、昆虫ではなくクモ類です。
⑥ トンボは昆虫です。
⑦ エビも節足動物ですが、甲殻類という昆虫とは異なるなかまです。
昆虫の特徴である「身体が頭・胸・腹に分かれる」「胸から足が6本生えている」という特徴を満たしているものを選べばよいことになります。「〇〇ムシ」のような名前だけで判断することはできません。
問4 難易度:★★★☆☆
① エノコログサは「猫じゃらし」のような形をした植物で、外来種ではありません。
② ヒアリは本来、南米中部に生息する毒をもつアリです。 2017年に日本で初めて確認され大きなニュースになりましたね。
③ アライグマは本来北米大陸原産の中型ほ乳類です。日本ではアニメの主人公になったことで大人気となり大量に持ち込まれましたが、飼育放棄されて野生化し、農作物を荒らすなど深刻な悪影響を及ぼしています。
④ オオクチバスはいわゆる「ブラックバス」のことです。いったん日本に持ち込まれたのち、釣り人などにより色々な場所に放流され広がったと考えられています。在来種の魚の卵や稚魚などを食べてしまいます。
問5 難易度:★★☆☆☆
① 国内に住んでいる種であっても、本来その地域には住んでいない「国内外来生物」もいます。
② 沖縄でハブ駆除の目的で放したマングースが定着してしまった例があります。
③ ヒアリなどは船の荷物などと一緒に日本に入ってきたといわれています。
④ 渡り鳥は本来の習性として昔から「渡り」を行っています。外来生物ではありません。
問6 難易度:★☆☆☆☆
外来生物は植物であっても、在来種から日光を得られる場所をうばったり、雑種をつくってしまうことで遺伝的なかく乱を起こすこともあります。
問7 難易度:★★★☆☆
まず、1回目の捕獲において外来魚Aは800個体とらえられ、除去されたので、800個体が減少したことになります。
その後、2回目の捕獲では600個体に減少しています。800個体減少したことで、捕獲される個体数が800個体から600個体に200個体減っている、つまり捕獲数が\frac{1}{4}だけ減っているということです。
「1回の捕獲において外来魚Aが捕獲される割合は、池に生息している外来魚Aの全個体数に対して一定」なので、1回目の捕獲の800個体は捕獲前にいた個体数の\frac{1}{4}にあたるということです。
よって、1回目の捕獲前にいた個体数は、
800÷\frac{1}{4}=3200(個体)
2 金属と酸の反応
金属と酸の反応の問題です。突然ですが、問題を解く前に『ベーコンサンドのはなし』をしましょう。
あるサンドイッチやさんでは、パン2枚、ベーコン3枚でベーコンサンドを1個作ります。
次の場合、ベーコンサンドは何個作れるでしょうか。また、材料は何がどれだけ余るでしょうか。
➀ パン20枚、ベーコン18枚あるとき。
実際に作ってみると、ベーコンサンドを6個作ることができ、パン8枚が余ることが分かります。
② パンは20枚のまま、ベーコンの枚数を3枚ずつ増やしていくとどうなるでしょうか。
ベーコン(枚) | 18 | 21 | 24 | 27 | 30 | 33 | 36 |
ベーコンサンド(個) | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 10 | 10 |
余るパン(枚) | 8 | 6 | 4 | 2 | 0 | 0 | 0 |
余るベーコン(枚) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 6 |
ベーコン30枚までは、ベーコンの枚数に比例してベーコンサンドが作れます。ベーコンの枚数が作れるベーコンサンドの数を決めているのです。そして、ベーコン30枚のとき、ちょうど材料の余りなくベーコンサンドが10個作れます。
ただし、ベーコン33枚からは、ベーコンが余りはじめます。作れるベーコンサンドの数は増えません。今度はパンの枚数が作れるベーコンサンドの数を決めているのです。
何が言いたいかというと、「いくつかの材料を組み合わせて製品を作るとき、製品の数量は余っていない材料(足りていない材料)の数量によって決まる」ということです。
これと同じことが、塩酸と金属(=材料)、発生する水素(=製品)の間で起こります。これを頭に入れて、実際に問題を解いてみましょう。
問1 難易度:★★☆☆☆
水素を発生する物質の組み合わせとして有名なのは、
・塩酸(硫酸)+鉄
・塩酸(硫酸)+アルミニウム
・塩酸(硫酸)+亜鉛
・水酸化ナトリウム水溶液+アルミニウム
・水酸化ナトリウム水溶液+亜鉛
なので、③と⑥。
問2 難易度:★★☆☆☆
水上置換法では、ふたをしっかり閉めていれば空気は入りません。また、水の上で気体を集めるとそこにはどうやっても飽和蒸気圧の分だけ水蒸気が含まれます。
よって、③。
問3 難易度:★★☆☆☆
(表1)より、塩酸の体積5~35㎤までは5㎤に対して7㎤の水素が発生していることが分かります。ただ、最後の45㎤のところはそうなっていないようです。
つまり、5~35㎤までは加えた塩酸が全て使われているため、発生する水素の体積は塩酸の体積に比例して決まっています。45㎤のところでそれが変わっているということは、発生する水素の体積が、鉄片の重さによって決まった、つまり鉄片が全て使われたことを示しています。
また、鉄片140㎤から発生する水素は56㎤が上限です。『サンドイッチやさんのはなし』で言えば、20枚のパンがあるときに作れるベーコンサンドが10個までだったのと同じです。
塩酸5㎤に対して水素7㎤が発生する割合で、水素56㎤が発生する量を考えればよいことになります。
56×\frac{5}{7}=40(㎤)
問4 難易度:★★★☆☆
塩酸の濃度が2倍なので、鉄片が全て使われるまでは発生する水素は表1の2倍となります。鉄片の重さは同じなので、発生する水素の体積の上限は同じです。その際にちょうど反応する塩酸の体積は問3の半分となり、20㎤です。よって、加えた塩酸の体積と発生する水素の体積の関係は下表のとおりです。
加えた塩酸の体積(㎤) | 0 | 5 | 15 | 20 | 25 | 35 | 45 |
発生した水素の体積(㎤) | 0 | 14 | 42 | 56 | 56 | 56 | 56 |
よってグラフは次の通りとなります。
問5 難易度:★★☆☆☆
問3と同様に考えます。塩酸5~25㎤までは塩酸5㎤に対して水素7㎤が発生しています。塩酸35㎤からは塩酸を増やしても水素の発生44.8㎤から増えないことから、亜鉛片がすべて使われていることが分かります。よって、塩酸5㎤に対して水素7㎤の割合でちょうど水素44.8㎤が発生する塩酸の量を計算すればよいので、
44.8×\frac{5}{7}=32(㎤)
問6 難易度:★★☆☆☆
鉄片140mgと亜鉛片130mgを溶かすのに必要な塩酸の体積の比は、
(鉄片):(亜鉛片)=40:32=5:4
同じ体積の塩酸で濃さを変えて鉄片と亜鉛片の両方をちょうど溶かすためには、濃度比(鉄片):(亜鉛片)=5:4。つまり鉄片に加える塩酸の濃度を亜鉛片に加える塩酸の濃度の\frac{5}{4}倍、つまり1.25倍にすればよい。
問7 難易度:★★☆☆☆
鉄片70mgと亜鉛片65mgはどちらも【実験1】、【実験2】の半分だから、ちょうど反応する塩酸も、発生する水素もそれぞれ半分である。よって、どちらも半分同士を足せばよい。
必要な塩酸:40÷2+32÷2=36(㎤)
発生する水素:56÷2+44.8÷2=50.4(㎤)
3 電気回路
電気回路の問題です。少し突っ込んだ知識を問う問題も含まれていますが、計算はひねりもなく得点源になる問題となっています。受験ではあまり見ない「mAh」という単位も出てきますが、問題文でしっかり説明されているので、読みとくことができればすんなり解答できるでしょう。
問1 難易度:★★★☆☆
熱伝導率についての知識を問う問題です。答えを2つにしぼるところまではそこまで難しくないですが、自信をもって解答できた受験生は少ないと思います。
物質によって熱の伝わりやすさは異なります。下の順序は頭に入れておいた方が良いでしょう。
【熱の伝わりやすさ】 空気 < 木やプラスチック < 水 < 金属
冬にその物質を実際に手で触った時の「冷たさ」を思い出してみましょう。金属って「冷たい」イメージがありますよね。でも手に触れる物体の温度自体は金属でもプラスチックでもほぼ同じ。触って「冷たい」と感じるということは、手から熱が勢いよく奪われているということ。それは熱の伝わりやすさの影響が大きいのです。
選択肢の中で、金属は③アルミニウムと⑤ニクロムなので、まずはこの二つにしぼれます。
ニクロムはニッケルとクロムの合金です。金属の中では電流が流れにくく熱にかわってしまうので電熱線として使われます。電熱線が出てくる問題なので、問題文をしっかり読まずにこの選択肢を選んでしまった人もいるかもしれません。
アルミニウムは金属の中でもかなり熱の伝わりやすい金属で、金属鍋の素材にも使われることからその性質はうかがい知ることができます。エアコンの熱を室外機から外気に放出するときにもアルミニウムが利用されています。
⑤ニクロムは熱の伝わりやすさの根拠が無いため少し迷いますが、アルミニウムが金属の中でも熱が伝わりやすいということを知っていれば③アルミニウムを選ぶことができます。
問2 難易度:★☆☆☆☆
(a)電熱線Aに電流を流すためにはスイッチ1を入れる必要がありますね。
また、電熱線Bに電流を流さないようにするには電熱線Bを行き止まりにすればよいので、スイッチ2と3はOFFにします。
よって答えは①スイッチ1。
(b)電熱線は電球と同じで、電熱線を直列2個、3個…と直列につなげていくと、電流は\frac{1}{2}、\frac{1}{3}…と減り、電熱線1つあたりの熱は減っていきます。
並列につなぐ場合は電熱線1つに流れる電流は1つつないだ場合と変わらず、発生する熱の合計はその分増えます。ただし、たくさんつなげばつなぐほど、電池がなくなるのは早くなります。というわけで、電熱線AとBが並列になれば よいので、スイッチ1と3が入ればよいことになります。
よって答えは④スイッチ1と3。
(c)電熱線や電球をまとめて抵抗といい、何もつないでいない導線と比べて電流が流れにくくなっています。実際には導線にも抵抗はあるのですが、とても小さいものです。
なので、回路の中に電熱線や電球、モーターなどがないルートがあると、そこに大きな電流が流れてしまい、故障の原因となります。
図のようにスイッチをすべて入れると、電熱線を通らない回路できてしまいますね。
このようなルートのことを日本語で「短絡」、英語では「short circuit」ということから、「ショート」ともいいます。
問3 難易度:★★☆☆☆
「ふつうの受験生が知らない知識だけど問題文を読めばわかる」というタイプの問題ですね。「容量:9000mA」とは、「9000mAの電流を1時間流せる」「例えば1000mAの電流だったら9時間流し続けることができる」と書いてありますので、9000mAを電流の大きさで割れば流せる時間が計算できることが分かります。よって、
9000 ÷ 500=18(時間)
問4 難易度:★★☆☆☆
(a)カイロのバッテリーから出る電流は2000mAですが、無駄が生じて40%減少するということなので、制携帯に流れ込む電流は、
2000× \frac{100ー40}{100}=1200(mA)
よって、要領3600mAhの制携帯バッテリーをゼロから完全に充電するための時間は、
3600÷1200=3(時間)
(b)カイロのバッテリーからは、無駄になったぶんも減っているので、減少した容量は2000×3=6000(mAh)。よって残っているのは、
9000ー6000=3000(mAh)
4 地層と断層
地層と断層に関する問題です。ほとんどは基本的な設問ですが、問3の「露頭」は中学受験ではなかなか出てこない用語ですね。これは別に答えられなくてもいいでしょう。
問1 難易度:★★☆☆☆
ふつうにニュースなどを見ていれば何度も報道されていましたね。2020年1月17日、国際地質科学連合により、 77.4万年前から12.9万年前までの地質年代が 「チバニアン」(Chibanian、千葉時代)と命名されました。
問2 難易度:★☆☆☆☆
(a)シアノバクテリアは光合成を行うことによって、地球の酸素を増やしました。
(b) 大気中の酸素が空の高い場所で紫外線と反応し、オゾン層をつくりました。オゾン層は有害な紫外線を吸収します。
(c)オゾン層が紫外線を吸収してくれるようになったおかげで、生物の陸上進出が可能になりました。
問3 難易度:★★★★☆
地層があらわになった場所を「露頭(ろとう)」といいます。ただ、この用語が中学受験で出題される頻度は低く、知らない受験生の方が多いと思います。
西宮市仁川にある露頭を撮影してきました。地層がきれいに分かれ、重なっている様子が観察できますね。ここも昔は海だったらしいです。
問4 難易度:★★☆☆☆
起こったと考えられる出来事をわかる範囲で順番に並べると、
D層が堆積
→②火山の噴火による火山灰(斜線部の層)が蓄積
→⑤C層が堆積
→断層がずれ、①地震が発生
→④河口となり、B層(れき)が堆積
→③海底となり、A層(泥)が堆積
問5 難易度:★★☆☆☆
サンヨウチュウの化石のように地層ができた時代を決定するのに役立つ化石を「示準化石」といいます。
これとよく似た言葉として「示相化石」があります。サンゴや貝殻、植物の痕跡など、その当時の環境を決定するのに役立つ化石のことです。
問6 難易度:★★☆☆☆
まず、断層ができるためには、逆方向の力がかかる必要があります。よって、②、③、⑤、⑥のうちのどれかということになります。
下図は断層の原因となる力のかかり方とズレ方による分類です。
これを参考にすると、選択肢の②は逆断層、③は右横ずれ断層、⑤は正断層、⑥は左横ずれ断層ができるときの力のかかり方だと分かります。
問題の断層のズレ方は逆断層なので、力のかかり方は②だと分かります。
問7 難易度:★★☆☆☆
筋肉や皮膚などの柔らかい部分は生物が死ぬとすぐに分解されて失われます。骨や貝殻は生物が死んだ後も長く残るので、化石に残りやすいのです。(実際には骨や貝殻の主成分である炭酸カルシウムは、長い時間の間に他の物質に置き換わることが多いです)
【解答】生物の体のうち柔らかい部分は死後すぐに分解されて残らないから。